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三番叟(オーケストラ版)録音
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      昨晩,徳島交響楽団と録音した『三番叟』のCDが今朝,速達で届きました。『三番叟』といえば数年前大阪の文楽座での正月公演や,実家のある別府のヤングセンターでの大衆演劇によるこれまた正月公演などで,そのおめでたい音楽,そして踊りを実際に楽しんだ記憶があるのですが,まさか自分が編曲,指揮まですることになるとは思いませんでした。
     きっかけは今年の6月,那賀町の清流座の方からの依頼でした。今年徳島で行われる国民文化祭で,11月6日に那賀町で行われる演奏会でのアトラクションに『三番叟』を舞うのに,オーケストラ版を作ってもらえないだろうか,との事。なんか面白そうだったので二つ返事で引き受けましたが,すぐに後悔するハメに。
     当然楽譜がないので,いただいた2種類の演奏の録音(普段はこれらの演奏をバックに舞われているとか)を採譜(耳コピ)して,それをオーケストラに移す作業となります。それも伴奏だけではなく「謡い」やかけ声など,音になっているもの全部。三味線や鼓はともかく,能管や「イヤーッ」といったかけ声は音程がありません。それに「謡い」の方も三味線の伴奏に微妙にズラして歌っているため,それを演奏可能な程度に簡略化して五線に移すのには正直とても苦労しました。いや,気が狂いそうになったほど。聴音はもともと得意な方でしたが,そもそも音楽の構造が違うので,「謡い」や能管の音のタイミングが拍より前なのか後なのかさえ混乱する始末。おまけに曲全体にちりばめられた「ヨッ」とか「ホッ」とかいうかけ声が,あるときは大きく,あるときはかすかに発せられて音空間を豊かにしています。これが聞き取れない!パソコンに取り込んでヘッドホンで何十回と聴き直しながら楽譜を埋めてゆきました。
     これをそのままオーケストラに移した訳ですが,出来上がったのはストラヴィンスキーか?と思わせるヘテロフォニーの音楽。今回は意地で「聞いたまま」を右から左に移す作業に徹した訳ですが,思ったのは日本の伝統的な響きを保ちつつ,それをヨーロッパの調性音楽の枠組みに鋳直した先達の日本人作曲家の偉大さです。「ヨナ抜き音階」など,一般の人はこれを日本古来の伝統的な音階と思われているようですが,これも明治期に新たに生み出された音階(似たものはあったけど)でした。
     さて9月中旬。できあがった楽譜をちょうど定期演奏会が終わったばかりの徳島交響楽団に送ったところ「話を聞いてない」という返事。どうやら連絡がうまくいってなかったようですが,いろいろやり取りの後,次回のニューイヤーコンサートの練習時間を一部割いて『三番叟』の練習,録音にあてていただけることになりました。
     という訳で昨晩が録音。しかし,邦楽,とくに三味線音楽のもつ独特のテンポ感というのは西洋音楽のみをやっている我々にとって異質なものです。ジワジワとテンポをあげつつ高揚してくる感じはもちろんロッシーニ・クレシェンドなど西洋音楽にもありますが,西洋音楽では「拍節」,「音型」で詰めてゆくのにたいして,邦楽ではそれに加えて「間」を詰めてゆく,そんな感じがありました。音型と音型の間をゆるめずにそこにも緊張感を保ちつつ詰めてゆく,なれない音楽の演奏には全員本当に消耗してしまいます。間に休憩をはさみながら,なんとか3本のテイクを録り終えました。徳島交響楽団のみなさん,本当にありがとうございました。
     「でも,やっぱオリジナルの方がいいよね。」って聞いた人はみんな言うんだろうな。なんかくやしい。
    | - | 11:58 | - | - | pookmark |