CALENDAR
S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     
<< July 2017 >>
ARCHIVES
CATEGORIES
RECOMMEND
MOBILE
qrcode
2017年7月22日(土)午後2時より銀座王子ホールにて小川明子アルトリサイタルを開催いたします。
0

    2017サロンコンチラシ

    演奏曲目と解説を以下に事前に公開します。

    なやましき晩夏の日に1925(北原白秋)

    芭蕉1925(北原白秋)

    垣の壊れ1925Autamun(北原白秋)

    薊の花1928(北原白秋)

    牡丹1925(北原白秋)

    城ヶ島の雨1928,2,11(北原白秋)

     

    斑猫1928(深尾須磨子)

    黴1928(深尾須磨子)

    舞1929(深尾須磨子)

     

    休憩

     

    旅役者1929(北原白秋)

    百姓歌1929(北原白秋)

    田植え歌1929(林柳波)

    富士山見たら1929(久保田宵二)

    親芋小芋1929,9(浜田広介)

     

    うすらあかりに1924(作詞者不詳)

    大君に1938.9/8Tokyo(片岸芳久美)

    母の歌1937(板谷節子)

    お六娘1929(林柳波)

     

     

    橋本國彦の歌曲を歌う

     

     20世紀生まれの作曲家,橋本國彦(1904-1949)は,瀧廉太郎(1879-1903)や山田耕筰(1886-1965),信時潔(1887-1965)らの,次の世代にあたる作曲家です。器楽曲や管弦楽曲も残した橋本ですが,彼にとって最も重要なジャンルは歌曲でした。西洋クラシック音楽=当時の現代音楽の動向のみならず,社会の流行にも敏感だった彼は,芸術歌曲のみならず,民謡風の曲や,当時我が国で放送が始まったラジオのための歌,そして戦時歌謡まで変貌自在にその才能を駆使しました。本日は,そんな彼の代表的な歌曲を中心に,珍しい曲や戦争へと向かいつつあった時代が感じられるような作品も取り上げたいと思います。

     

    『なやましき晩夏の日に』以下6曲

     最初に演奏するのは,北原白秋の詩による歌曲です。1曲目の『なやましき晩夏の日に』こそ,洋楽風のしつらえですが,残りはヨナ抜き音階(完全ではありませんが)による,小唄風な曲を集めてみました。昭和の半ばまでは邦楽の伝統も根強く,小唄や都々逸なども人々の間でよく歌われ,聴かれていました。『薊の花』,『牡丹』などはピアノ伴奏による,さしずめ「洋風小唄」といったところでしょうか。なお「城ヶ島の雨」は,原曲にあったフルートのオブリガートをピアノに取り込んで,いわば「編曲版」として演奏いたします。

     

    『斑猫』,『黴』,『舞』

     深尾須磨子1888-1974の詩による三大歌曲。いずれもエキゾチック,あるいはグロテスクなイメージを喚起させる奇抜な作品です。とくに,歌舞伎俳優六代目菊五郎の踊る『娘道成寺』の公演に接し,その感動を歌ったという『舞』は,それまでのゆったりした日本歌曲のリズムに,当時新しかったシュプレッヒシュティンメ(しゃべり声)の技法を取り入れた実験的作品として,作曲家の名を高めた名曲です。いずれも豪華絢爛たるピアニスティックな伴奏がつけられているのも特徴です。

     

    『旅役者』以下5曲

     演奏会冒頭にご紹介した白秋の歌もそうですが,大正から昭和初期,多くの作曲家によって,さかんに作られたのが「新民謡」と呼ばれるジャンルでした。ここでは,第1ステージのしっとりした曲とは打って変わった,ユーモラスで,より野鄙な味わいの曲をお聞きいただきます。

     

    『うすらあかりに』以下4曲

     先ず演奏するのが,1924年に作曲された最初期の歌曲です。作曲科のまだなかった東京音楽学校にヴァイオリンで入学したものの,作曲はほぼ独学だった橋本による野心作といえるでしょう。時代は下って1937年の盧溝橋事件に始まる日中戦争以後,全国から軍馬供出として馬が集められました。天皇陛下に愛馬を差し出す,その気持ちを歌った『大君に』(1938)。『母の歌』には現在市販の楽譜からは消されていますが「…今に君が代歌うわね」という3番の歌詞がありました。そして本日最後にお届けするのが『お六娘』(1929)。落語のようなストーリーに,ベベンベンベンベン…まるで浪花節の三味線のようなピアノ伴奏が楽しい,かつて「我らがテノール」藤原義江が得意としていた名曲です。

    | - | 07:47 | - | - | pookmark |
    2017 MUSICADE 七夕コンサート
    0

       

       来る2017年7月8日(土)午後2時より,鳴門市ドイツ館にてアルトの小川明子,テノールの頃安利秀によります恒例の七夕コンサートを開催いたします。楽曲解説を書きましたので,演奏会に先立って当ブログにて公開いたします。興味をお持ちの皆様,当日券も十分ございますので,是非足をお運び下さい。

       

      鑑賞の手引き

       七夕コンサートもすでに何回目を迎えたでしょう?名曲をお届けしたい,でもマンネリ化は避けたい,そしてこれまでにご紹介してこなかったような曲を皆様にお聞かせしたい,けどあまりバラバラな選曲にはしたくない…プログラムには毎回頭を悩ませています。今回は「しあわせを探して」をテーマに曲を集めてみました。しあわせな歌ばかりではないのですが…。

       

      第1部

       

      ◆ エンリケ・グラナドス(1867-1916)歌曲集トナディーリャスより

       スペインの民族主義的な作曲家グラナドスによる歌曲の代表作です。「軽い歌」を意味するトナディーリャとは,もともと18世紀スペインで流行った短い歌芝居を指す言葉でした。フェルナンド・ペリケーによる詩は,いわば歌芝居に登場する人物たちのアリア,といった趣があります。いずれも,いかにもスペインらしい情緒に溢れた名曲です。全12曲から6曲を抜粋して演奏します。

      ・La Maja dolorosa機Ν供Ν掘愧欧にくれるマハ』

       のっけから不幸のどん底でごめんなさい。最初に演奏する3曲は恋人を死によって奪われた女の歌です。「マハ」とは「いい女」の意。情熱的なマドリードの下町女,といったところでしょうか。恋人を失ったばかりの激しい感情の爆発(1曲目),沈鬱な嘆き(2曲目),追憶(3曲目)と変化してゆく女の心が歌われています。

      • Amor y odio『愛と憎しみ』

       男へと密かに思いを寄せる女が歌う,片思いの歌。前半は短調によるサラバンド風の美しい音楽。そして長調の中間部では,隠しておいた恋心が相手に知られてしまい,つれなくされて傷ついた乙女心を歌っています。

      • El tra la la y Punteado『トララとギターのつまびき』

       言いよる男を軽くいなす,女の歌。「あんたがいくら口説いたって無駄よ,私は歌をやめないわ。トラララ…」どこかビゼーのオペラ,カルメンの一場面を思わせるようなセリフです。ピアノはギターの伴奏を模しています。

      • El majo discreto『分別のあるマホ』

       「マハ」がいい女を意味するのに対し,いい男を意味するのが「マホ」。「あたしのマホは醜男だって皆は言うけど,恋は盲目。あたしのマホはイケメンじゃないけど,分別があるわ。」幸せ一杯のマハが歌う,おのろけの歌。

       

      • シューベルト(1797-1828)の歌曲

       薄幸の作曲家シューベルトは,交響曲やオペラで身を立てることを望みましたが,その日暮らしのために売れやすい歌曲やピアノ連弾を書き続けることを強いられました。交響曲『未完成』や『グレート』は彼の死後に発見・初演されたのです。そして時代は反動的なメッテルニヒ体制。秘密警察が支配する暗黒時代でした。彼の歌曲の歌詞には体制批判こそありませんが,春を待ち望む歌や孤独,さすらいを歌った歌などは時代の気分を表しています。

      • Der Musensohn『ミューズの子』ゲーテ詩

       ミューズとはギリシャ神話に出てくる芸術を司る女神たち。美しい自然に囲まれ,詩興にひたった詩人は,自らを女神の息子になぞらえて歌います。

      • 『夕映えに』ラッペ詩

       「おお何と美しいのだろう,貴方の世界は!」黄金色の夕日に照らし出される美しい世界を前に造物主への感嘆が漏れ出ます。自分への,そして信仰への疑念,迷いを打ち払う大自然を前にした祈りの歌です。

      • Der Jüngling an der Bache『水辺の若者』シラー詩

       小川のほとりに座る少年。その口から漏れる悲しみの言葉は,想い人への満たされぬ憧れから発したもの。シューベルトの音楽は千々に乱れる若者の想いを千変万化する曲想と次々と移り変わる転調とによってすくい取っています。

      • Wandrers Nachtlied『旅人の夜の歌供戰押璽道

       静まり返った夜の中,遠く山々の頂や森の梢を望む場所に立ちながら旅人は己の人生の旅路の終わりに思いを馳せます。葬送行進曲を思わせるような静かな歩みで始まる音楽は,しばし漂うような伴奏に変わった後,「Warte nur,balde = 待つのだ,じきに」以降,再び立ちつくすかのような音楽へと戻って来ます。

      • Der Wanderer an der Mond『月に寄せるさすらい人の歌』ザイドル詩

       中世の昔から遍歴僧や騎士に限らず,一般庶民である職人の徒弟も,見習い期間の後,腕を磨くために諸国を放浪することがドイツの人々の習いでした。旅する若者は,夜空をさすらう月と孤独な自分とを引き比べ,人々に愛される月を羨んでいます。

      • Seligkeit『幸福』ヘルティ詩

       軽快なワルツのリズムに乗って,1番と2番では幸福に満ちた天国の宴会?の様子が描かれます。そして3番では…。「でも僕はずっとここにいたい。ラウラちゃんが微笑んでるから…。」恋で幸せ一杯の男の歌です。

       

      第2部

       

      • 幸せを探して〜日本の歌
      • 中田喜直1923-2000作曲『むこうむこう』三井ふたばこ1919-1991詩

       『夏の思い出』で知られる日本歌曲,童謡の作曲家,中田喜直の1960年代の作品。父中田章は『早春賦』で知られる作曲家でした。作詞の三井ふたばこは西条八十の娘。

      • 中田喜直作曲『歌をください』渡辺達生1952-詩

       1990年代に書かれたシリアスな歌曲です。哀しみや苦しみ,憎しみに満ちた世にあって,それらを勇気となぐさめ,祈りに変えてくれるような歌を私に下さい。そんな願いがドラマチックに歌われます。

       

      • 木下牧子1956-作曲『夢みたものは』立原道造1914-1939詩

       「夢みたものはひとつの幸福…」夭逝した天才詩人,立原道造の美しい詩に,現在我が国で最も人気あるクラシック?作曲家の一人,木下牧子が付曲した作品。一見シンプルなリズムと和声とを駆使して,詩の微妙なニュアンスまで音楽は肉薄しています。

      • なかにしあかね『二番目に言いたいこと』星野富弘1946-詩

       体育教師時代,中学校のクラブ活動中の事故で四肢の自由を失うも,口にくわえた筆で絵を描き続ける画家で詩人の星野富弘。近年人気上昇中の作曲家なかにしあかねはネットで調べても年齢不詳ですが,今年○才になる山田の芸大での,実は1級上の先輩です。

      • 下總皖一1898-1962作曲『山のあなたに』ブッセ1872-1918詩

       ヴェルレーヌら当時ヨーロッパ最先端の詩を翻訳した上田敏1874-1916による,ドイツの詩人カール・ブッセの『山のあなたに』は,教科書にも掲載され,広く読まれました。『たなばたさま』でご存知の下總皖一は,数多くの理論書を残し,東京芸術大学の音楽学部長も務めた作曲家です。

      • 古関裕而1909-89作曲『白鳥の歌』若山牧水1885-1928詩,1947年

       阪神タイガースの『六甲おろし』,全国高校野球選手権大会の歌『栄冠は君に輝く』やテレビ,ラジオの音楽で知られる古関裕而による,若山牧水の短歌三首への付曲。やや古風ながらも格調高い名曲です。

      • 中村八大1931-92作曲『遠くへ行きたい』永六輔1933-2016詩,1962年

       坂本九の『上を向いて歩こう』,梓みちよの『こんにちは赤ちゃん』などと並ぶ,中村八大&永六輔コンビによるヒット曲です。発表当時歌っていたのはジェリー藤尾。

      • 谷村新司1948-作詞作曲『いい日旅立ち』1978年

       山口百恵の歌によるヒット,そして旧国鉄のキャンペーンで,耳にタコができるほど流れていた記憶があります。百恵ちゃんの憂いを秘めた声にぴったりですが,旋律の跳躍,起伏の激しい難曲です。

      • 平井康三郎1910-2002作曲『うぬぼれ鏡』小黒恵子1928-2014詩

       とある朝。午後の女子会?へお出かけ前の,オバサンの無邪気なナルシズムを,ショパンのワルツ風伴奏に乗せ,ユーモアを込めて歌い上げます。そろそろ実年齢も歌にふさわしくなってきたから?今回初挑戦です。

      • ドニゼッティ1797-1848作曲オペラ『愛の妙薬』より「人知れぬ涙」

       オペラの狂言回しとなる「愛の妙薬」とは惚れ薬ならぬモテ薬。主人公の青年,ネモリーノはインチキ薬剤師から手に入れた「愛の妙薬」で,片思いのアディーナはオレの物と思い込んでしまい大失敗。しかし涙を流すアディーナを見て,実は彼女も自分の事を愛してくれていると知り,感極まって歌う愛の歌です

       

      解説:山田啓明

      | お知らせ | 00:36 | - | - | pookmark |
      同声会徳島県支部主催演奏会が徳島新聞に掲載されました
      0

        4月22日(土)午後2時より開催予定の東京芸術大学音楽学部同声会主催演奏会が徳島新聞に掲載されました。

        徳島新聞2017年3月31日朝刊より

        同声会演奏会17徳島新聞

         

        チケットは以下で取り扱っています。

        黒崎楽器(本店・阿南店・鴨島店・鳴門店)

        井上書房(板野駅前)

        ブックス・ジュピター(藍住奥野)

        井上書房大学店(鳴門教育大学大学会館書店)

         

        皆様のお越しをお待ちしています。

         

        | - | 00:35 | - | - | pookmark |
        平成29年度東京芸術大学音楽学部同声会徳島県支部主催演奏会を開催いたします
        0

           平成29年度東京芸術大学音楽学部同声会徳島県支部主催演奏会を開催いたします。

          とき:平成29年4月22日(土)

          ところ:徳島県郷土文化会館あわぎんホール(大ホール)

           

          同声会演奏会17オモテ

           

           徳島県出身、または在住の東京芸術大学音楽部卒業・修了生による演奏会です。今回は全て歌のステージ。三味線伴奏による独唱曲の新曲初演、ロッシーニやストラヴィンスキーのオペラアリアや重唱を中心とした、盛りだくさんのプログラムとなっております。

           

          出演者:

          井上ゆかり(ソプラノ)、松平幸(ソプラノ)、杣友惠子(メゾソプラノ)、戸邉祐子(メゾソプラノ)、小川明子(アルト)、稀音家治乃(長唄三味線)、松岡貴史(作曲・ピアノ)、松岡みち子(作曲)、山田啓明(ピアノ)、米田佳子(ピアノ)

           

          曲目:

          松岡貴史作曲 アルトと三味線のための「古今春秋」(初演)

          松岡みち子作曲 無伴奏女声三重唱

          「ひとすじに−八木重吉−の詩による3章」(初演)

          バーンスタイン作曲 「私は音楽なんか大嫌い」

          ロッシーニ作曲 「約束」「誘い」

          ファリャ作曲 「7つのスペイン民謡」より

          信時潔作曲 「茉莉花」

          橋本国彦作曲 「お菓子と娘」「斑猫」

           

          ストラヴィンスキー作曲 歌劇『放蕩児の遍歴』より

          「トムからの便りがない...私は彼のもとへ」

           

          ロッシーニ作曲 歌劇『セヴィリアの理髪師』より

          「今の歌声は」

           

          ロッシーニ作曲 歌劇『タンクレディ』より

          「おお、祖国よ〜大いなる不安と苦しみの後に」

           

          ロッシーニ作曲 歌劇『セミラーミデ』より

          二重唱「その忠誠を永遠に」

          | お知らせ | 11:45 | - | - | pookmark |
          信時潔の歌曲について(沙羅、小倉百人一首より、小曲集、帰去来、中国名詩五首)
          0

            去る2017年2月18/19日に東京と静岡でShin Musica様主催の信時潔の演奏会を小川明子(アルト)と私(ピアノ)、井崎圭氏(ピアノ独奏)で行いました。この時のプログラムに解説を書かせていただいたので、主催者の了解を得てここに転載します。なお、この時の演奏会の模様の一部は、YouTubeのチャンネル「シン・ムジカ/SHIN MUSICA」でご覧になれます。

             

             

            鑑賞の手引き

             「海ゆかば」1937そして近年再注目されている『海道東征』1940の作曲家として知られる信時潔1887-1965は,山田耕筰1886-1965の1才年下,瀧廉太郎1879-1903の8才年下の,いわば我が国洋楽の草分け的存在である。がしかし,山田,瀧の童謡唱歌が人口に膾炙するに対して,信時の作品はなかなか取り上げられないのが実情ではないか。本演奏会は,作品をまとめて演奏する事を通して,作曲家信時潔のイメージをより確かなものへと鋳直そうという試みである。

             明治20年12月29日大阪生まれ。実父吉岡弘毅はもともと尊王攘夷派の武士で戊辰戦争を戦い,明治政府の外交官を務めていたのが一念発起,下野してのちクリスチャンとなって長老派(カルヴァン派)教会の牧師へと転じた人物であった。11才の時やはり北大阪の長老派牧師,信時義政の養子となる。讃美歌に親しみ,オルガンも弾けた信時は東京音楽学校でチェロと作曲を学び,母校の助教授に奉職するとともにチェリスト,作曲家として活動を始めた。32才でベルリンに留学,帰国して後は作曲・演奏にとどまらず理論書など翻訳,執筆とともに,母校の作曲科創設に尽力する。また文部省刊行の『新訂尋常小学唱歌』編纂にもたずさわるなど,野にあった山田耕筰に対して,我が国の音楽界の官あるいはアカデミズム側の中心的存在であった。49才の時に作曲された「海ゆかば」,そして52才で作曲された『海道東征』が,経緯や本人の意図は別として,信時潔という作曲家の評価を決定したことは歴史のいたずらか,それとも運命か。戦後,母校を辞した後も創作を続けた信時は,校歌や団体歌を数多く残している。

             

            歌曲集『沙羅』1936

             作曲当時48才。連作歌曲の名曲として,この曲だけはステージにしばしばかけられる。国文学者の清水重道1909-1958は,東京音楽学校の同僚。歌詞はいずれも「やまとことば」=文語体であるが,「丹沢」,「北秋の」,「ゆめ」のように現代的なもの,「あづまやの」,「占ふと」のように王朝風のものなど様々な詩想が入り乱れている。それら多彩なベクトルを音楽化し,まとめてしまう作曲家の力量は見事としか言いようが無い。

             

            歌曲集『小倉百人一首より』1920-22(「ほととぎす」のみ1928)

             ベルリン留学中の作品。「国詩の本塁として不死鳥の如き永い生命を持ち続けた短歌の作曲化は私の宿願のひとつである」と後に語っているが,その最初の試みである。曲毎に様々なスタイルや和声が試されているが,すでに信時らしい簡潔さと格調の高さ,そしていくつかには私たちが今日イメージする「日本的洋楽の響き」を聴き取ることができる。帰国後1925年に出版されたが,「ほととぎす」のみは後に新たに作曲された。

             

            『木の葉集』1936より

             歌曲集『沙羅』と同時期に作曲されたピアノ曲集は,信時の代表作のひとつ。シューマンの『子供の情景』やメンデルスゾーンの『無言歌』などと同じロマン派のキャラクター・ピースの体裁を取っているが,決して子供向けの曲ではなく,作曲家自身が述べているように,当時我が国に輩出して来た若いピアニスト達の高い演奏能力を想定して書かれている。『沙羅』同様に音の運びはかの時代においても保守的な感は禁じ得ないが,そのぶん作曲家の円熟した技巧への自信が伝わって来る力作である。今回は全15曲から6曲を抜粋して演奏する。

             

            『小曲集』1917より/「帰去来」1948

             1925年出版の『小曲集』全4冊に収められた様々な歌から北原白秋1885-1942詩による歌曲6曲をまず取り上げてみたい。いずれも留学前の1917年に作曲されたものである。山田耕筰の白秋作品の多くが童謡で,口語体で簡明なのに対し,信時のそれは文語体で内面はより複雑である。是非歌詞を理解した上で味わいたい。時代は下って「帰去来」は詩人晩年の望郷の歌。白秋は『海道東征』の作詞者でもあるが,この詩も古事記や万葉の世界を彷彿とさせる。冒頭の「やまと」とは白秋の生地,筑紫山門郡のこと。「やまとは国のまほろば…」倭建命辞世の歌,死んで鳥となった神話の英雄のイメージが背後にこだましている。詩人の死後,詩碑が故郷柳川に建立されるのを機に作曲された。しみじみとした名曲である。

             

            歌曲集『中国名詩五首』1948/「不盡山を望みて」1930

             「海ゆかば」を書いた事を悔やんで戦後一切作品を発表しなかった,と言われるのは俗説で,戦後も信時は創作を続け,作品を発表し続けた。バッハへの心酔ぶりが有名な信時だが,次第に傾倒を深めていったのがヴァーグナーである。この『中国名詩五首』のいくつかには明らかにヴァーグナーの影響と「海ゆかば」との相似が聴き取れる。ずっと古い「不盡山を望みて」さえ『マイスタージンガー』前奏曲に似ていないだろうか。「海ゆかば」の魔力の源泉はヴァーグナーにあるのかも知れない。なお『中国名詩五首』について,以下に大意を記す。

            「春望」国は戦争に破れても山河は残り,城都には春がめぐって草木が深く茂る。時を感じては花に涙し,別れを恨んでは鳥に驚く。三月にわたる戦火にあって家族からの手紙の価値は万金にあたる。白髪頭を掻くほどに髪は短くなって,簪(しん=かんざし)を刺すにも耐えられないほどだ。

            「偶成」少年は老いやすく,学問は成就しがたい。一寸の光陰も軽んじてはならぬ。とはいえ池塘(池のほとり)で春草の夢が覚めぬうちに,階前(庭先)の梧葉(アオギリの葉)には秋の風が。

            「磧中の作」馬を走らせて西へと来たが,このまま天まで至りそうだ。家を辞してから二度満月を見た。今夜はどこに宿るか分からない。平らな沙漠は万里に広がり,人家の煙は断えてない。表題の「磧(せき)」とは沙漠のこと。中国は西へ行くほど標高が高くなり,崑崙山脈へと至る。

            「江南の春」千里に広がる土地にうぐいすは鳴き,木々の緑が紅い花に映えている。水辺の村や山中の郭では酒屋の旗が風にゆれる。南朝時代の四百八十もの寺,いくつかの楼台が煙雨にかすむ。

            「海に浮かぶ」険夷(幸不幸)など胸中にとどこおらせない。浮雲が大空を過ぎるのと何も異ならない。今宵は静かだ。海の濤(なみ)は三万里に広がる。月明かりの中に錫杖を飛ばして歩めば,天風に乗って下るがごとき清々しさだ。

             

             

            | - | 10:14 | - | - | pookmark |
            2017.3.20鳴門アカデミー合唱団演奏会
            0
              2017年3月20日(月曜日=春分の日)午後2時より、徳島市の
              「あわぎんホール」4F大会議室におきまして、鳴門アカデミー合唱団
              第4回演奏会を開催いたします。曲目はジョスカン・デ・プレの『ミサ
              ・パンジェ・リングァ』、J.S.バッハのカンタータ第2番「ああ神よ、
              天より見そなわし給え」と同67番『留めよ心に主イエスを』です。古い
              合唱音楽に興味をお持ちの皆さん、是非演奏会に足をお運び下さい。
              お待ちしています。
              チラシ表
              

              チラシ裏

              | お知らせ | 00:42 | - | - | pookmark |
              ありがとうございました。
              0
                 7月5日(土)、ドイツ館で行われました2014MUSICADE七夕コンサートはおかげさまをもちまして、成功裡に終えることができました。ご来場下さいました皆様、また演奏会を陰で支えて下さいました皆様には厚く御礼申し上げます。どうもありがとうございました。
                 演奏会の模様は後日テレビ鳴門より放送される予定です。放送日程が決まりましたら、あらためてご案内いたします。
                | - | 14:56 | - | - | pookmark |
                皆様,どうもありがとうございました。
                0
                   さる4月29日に徳島市立文化センターにて開催されました平成26年度東京芸術大学音楽学部同声会徳島県支部主催演奏会は,あいにくの悪天候にも関わらず多数のご来場をお迎えして無事終了することができました。これもひとえに鳴門「第九」を歌う会様はじめ,多くの皆様のご尽力のお陰と感謝しております。特に女声合唱団グリューン・コールの皆様には当日の受付業務をお手伝いいただきました。その心の行き届いた細やかなお仕事に心より御礼申し上げます。一緒に手伝って下さった鳴教大芸術系音楽コースの学生のみなさん,本当にありがとうございました。



                   
                  | - | 00:28 | - | - | pookmark |
                  東京藝術大学音楽学部同声会徳島県支部主催演奏会
                  0
                     来る平成26年4月29日(火祝)午後5時より,徳島市立文化センターにおきまして東京藝術大学同声会徳島県支部主催演奏会を開催いたします。小川明子(アルト)はじめ,現在徳島に在住の実力派,井上ゆかりさん(ソプラノ)と戸邉祐子さん(メゾソプラノ),そして徳島出身で現在東京芸術大学に在学中の松平幸さん(ソプラノ),宮本有里さん(ヴァイオリン),野間愛さん(メゾソプラノ)が登場します。伴奏は私山田啓明に鳴教大の松岡貴史先生と米田佳子さん。松岡先生は奥様のみち子先生とともに作品も提供して下さいました。詳しくは下のチラシをクリック!
                    同声会14チラシ
                    | お知らせ | 01:06 | - | - | pookmark |
                    山田和廣先生,おめでとうございます。
                    0
                       私が毎年指導に伺っている大分大学医学部管弦楽団の名誉顧問でいらっしゃる山田和廣先生が,この秋の叙勲で,瑞宝中綬章を受賞されました。ここに謹んでお祝い申し上げます。  先生は創立以来,学生達を暖かく見守るとともに,最近までオーケストラで学生達と共にヴァイオリンパートで定期演奏会に出演されていました。また,毎年夏に先生のご自宅でバーベキューを開催,団を丸ごと招待して下さってます。
                      | - | 08:06 | - | - | pookmark |
                      | 1/4PAGES | >>